超越論的と超越的の違いは?「超越論的哲学」についても


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「やたらと専門用語が多い」というのは、カント哲学が難解な理由の一つでしょう。

今回はそんなカント哲学の専門用語の中から「超越論的」「超越的」の意味を解説していきます。

1.「超越的」の意味

「超越的」は一般的に、ある領域を超えているあるいはある領域の外側にあるという意味です。ちなみに反対語は「内在的」です。

まあ、この2つの言葉は普通の会話にも使えるのではないでしょうか。

しかし、カントは少し違った意味で「超越的」を使います。

(カントの用法における)超越的とは

経験可能な領域を超えているを超えていること。例えば、神や魂に関わる認識について。

カントの哲学はイギリス経験論vs大陸合理論の決着をつけたものなので、

「人間が何かを【経験=認識】するとは一体どういうことなのか」に対する関心が第一にあるわけですね。

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2.「超越論的」の意味

こちらはカントの造語です。先ほどの続きなのですが、

神や魂が存在したとしても人間がそれらを認識できるとは限らないですよね。

さらに言えば

「神や魂を認識できた」と思ってもそれは勘違いかもしれません。

よって、まずは人間の【認識能力=何かを経験するための条件】はどのようなものなのかを問わなければなりません。

ここで定義付けをしましょう。

2-1.超越論的とは

「人間が何かを経験するための条件にかかわる」の意。

ちなみにカント自分の哲学的立場を「超越論的観念論」と呼んでいたようです。

「経験論」「合理論」「観念論」など難しい言葉が多く出てきますが、一つ一つ覚えていきましょう。

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2-2.具体例をいくつか

人間が何かを経験するための条件】と言われてもピンと来ないかもしれませんが、例えば、

雲が見えた」ことを経験するためには、まず視力が必要ですよね。これも条件の一つです。

では「雲が流れていった」ことを経験するには何が必要でしょうか。

  1. [過去→現在→未来]へと経過していく時間感覚
  2. 先ほど経験した事」と「経験している事」を繋ぎ合わせる意識

などが必要です。

「超越論的統覚」と言って、カントの主作である『純粋理性批判』の内容にモロに入ってしまうためここでは詳しく解説しませんが、

【何かを経験するための条件】にはいろいろなものがあることが分かったと思います。

これらを精査していくのが「超越論的観念論」の立場だというわけですね。

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2-3.アプリオリとアポステリオリ

ここまで来ればカント哲学の基本用語である「アプリオリ」「アポステリオリ」の意味や意義もわかるでしょう。

ザックリ言えば、「アプリオリ→経験なしに/アポステリオリ→経験に基づいて」という意味なのですが、

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ところで、元々transcendentalは「超越論的」ではなく「先験的」と訳されていたそうです。

同音異義の「先的」とややこしいからこの訳を止めたというのもあるのかもしれませんが、文字通り、

先験的→経験に先立つ→経験するのための条件]という意味でこちらの方がわかりやすかったのではないでしょうか。

また

ぶっちゃけて言えば「超越的」も「形而上学的」という言葉を使った方が哲学史の流れから言えば良かったこと請け合いです。

しかし、カントは「超越的」という言葉を使ったため、

それに伴いtranscendentalも「先験的より超越論的が良いんじゃない?」的な事になったのでしょう。

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3.フッサールにおける「超越的」「超越論的」

ここまでカントに関しての話をしてきたのですが、最後にフッサールの話をしましょう。

フッサールはカントの超越論的観念論を独自に継承したと言われています(フッサールが提唱したのはあの有名な「現象学」です)。

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その際に「超越的」と「超越論的」も独特な使い方をしました。フッサールにおいては、

  • 超越的意識にとっての全ての対象。
  • 超越論的→あらゆる実在を無批判に想定してしまう態度(自然的態度)から距離をとって、それを反省する哲学的態度。

という意味です。

「実在」や「自然的態度」などまた新たな用語が出てきましたが、カントの哲学を知っていれば様々な用語の内容も大体わかるようになります。

それほどカントの哲学は包括的だということです。

ちなみに

カントにおいても、神や魂などの「超越的」なものは理解することはできませんが意識の対象にすることはできます

フッサールの現象学は意識を「多様なものの存在意味が構成される場」として捉え直すのですが、これについては別の機会に解説します。

以上です。ありがとうございました。
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