虐待と脳 | 面前DVで記憶力が低下?通常のDVとの違いは?


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心理的虐待とは文字通り子どもを心理的に虐待することなのですが、厚生労働省は心理的虐待に当たる行為として

言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子供の目の前で家族に対して暴力をふるう(DV)など

出典元:厚生労働省『児童虐待防止対策』

この4つを挙げています。今回注目して欲しいのは「子供の目の前で家族に対して暴力をふるう行為」=面前DVです。

あまり聞きなじみのない言葉かもしれませんが、

なんと

心理的虐待として通告のあった事例の内面前DVは全体の46.1%を占めていたそうです(2016年時の調査)。

今回は近年関心が高まっているこの「面前DV」をへの影響や通常のDVとの違いや毒親との関係を交えて解説します。

1.虐待による脳への影響

面前DVがこれまであまり注目をされてこなかった理由は、子どもを直接虐待するわけではないからでしょう。

なぜ、近年になって注目されだした理由は定かではありませんが、

夫婦間のDVによって子どもがショックを受け、引きこもりうつなどのトラブルを抱えるという問題が多発したことが関係があるのかもしれません。

が関係があるのかもしれません。

ちなみに厚生労働省の定義では「暴力の目撃」を想定しているようでしたが、「暴言の見聞き」も面前DVに含まれます。

1-1.DVとは何か

そもそもDV(domestic violence)とは何なのでしょうか。

DVとは夫婦間や内縁関係の者の間で起こる家庭内暴力です。この場合の暴力には「身体的暴力」だけではなく「言葉の暴力」も含まれます。

「身体的暴力」の方が悲惨なイメージがありますが「言葉の暴力」は客観的に見てダメージがわからないという厄介さがあります。

さらに「言葉の暴力」は親から子どもに向けられた時厄介さが増します。

1-2.身体的暴力と言葉の暴力(暴言)

「身体の傷は癒えるけれど心の傷は癒えない。だから身体的暴力よりも言葉の暴力の方が危険だ」などはよく聞くセリフですが、

これは単なる比喩表現ではありません。

実際に

言葉の暴力(暴言)による心の傷は子どもの心に長期にわたって影を落とし、人生を支配してしまいます。

なお、ここでの「暴言」は

子供の「身体的特徴」「知能」「能力」「人間としての価値」などについて、日常的かつ執拗に、ひどい言葉で攻撃を加える

出典元:スーザン・フォワード『毒になる親』

というかなり過激なものを想定してください。

このような過度な誹謗中傷日常的にされた結果、子どもは本当に自分は無力で価値のない人間だと思うようになってしまうのです。

これが「心の傷」の正体であり「トラウマ」と言ってもいいのですが、実は脳も傷付いているということに注意しましょう。

1-3.虐待の種類によって脳へのダメージは異なる

執拗な暴言に晒され続けると、子どもの脳の「聴覚野」という部分は肥大化してしまうようです。

聴覚野が肥大化すると、人の話を聞き取ったり会話をしたりする際、脳に余計な負担がかかり、心因性難聴となって情緒不安定になったり、人とかかわること自体を恐れるようになったりする場合もあります。

出典元:友田明美『親の脳を癒やせば子どもの脳は変わる』

心因性難聴」というのは聞きなじみのない言葉だと思いますが

人とかかわること自体を恐れるようになる」というのはわかりやすい被害だと思います。

常に相手の言葉に気を張ってしまったり脅威を感じてしまったりするので、コミュニケーション自体が嫌になるといった所でしょう。

一方、身体的暴力(身体的虐待)では「前頭前野」や「右前帯状回」に影響が出るようです。

脳へのダメージを考えると身体的虐待の方が深刻にも思えるのですが、暴言には先述したように自己肯定感の低下も伴います。

やはりどちらも危険なわけです。

※身体的虐待に関しては「体罰はどの程度容認できるのか」や「親の特殊なパーソナリティー」など様々な議論が必要なので後日まとめます。

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以上のことは、

暴力による「身体的虐待」と暴言による「心理的虐待」では脳の異なる部分にダメージが残るということを示唆しています。

1-4.DVとの関係性

「脳へのダメージ」は「脳の萎縮」とも言われます。

そして

「脳の萎縮」というのは、おそらく「脳の成長を阻害する(予想される脳の容量まで成長しない)」というニュアンスが強いのでしょう。

よって成熟した大人の脳にも同じことが言えるのかはわかりませんが、DVでももしかしたら脳の萎縮は起こるのかもしれません。

2.面前DVの意外な影響

面前DVでは子どもの脳はどうなるのでしょうか。

面前DVとは

夫婦間の暴力や暴言(身体的・心理的DV)を見聞きすること。

ということは身体的虐待と心理的虐待におけるダメージと同じ被害が子どもの脳に起こりそうですがそういうわけではないようです。

2-1.面前DVで委縮するのは視覚野

面前DVでは「視覚野」という視覚に関わる部分が委縮するそうです。

厳密に言えば視覚野の一部で、単語の認知や夢を見ることに関わる「舌状回」が委縮します。

その委縮率を見てみると、身体的なDVを目撃した場合は約3%でしたが、言葉によるDVの場合、20%も小さくなっており、実に6~7倍もの影響を示していたのです。

出典元:友田明美『子どもの脳を傷つける親たち』

単語の認知に関わる部分が委縮するので「言葉によるDV」の方が影響が大きいということでしょう。

ところで、視覚野は「映像の記憶形成」にも携わるようです。

2-2.記憶力が低下する?

視覚野は目の前のものを見るだけではなく、「映像の記憶形成」とも強く関わる場所だと考えられています。つまり、「視覚的なメモリ容量の減少」につながっている可能性があります。

出典元:同上

「視覚的なメモリ容量の減少」が起るとどうなるのでしょうか。

被害者の脳はメモリ容量を減少させることにより、苦痛を伴う記憶を脳内にとどめておかないようにしているのではないかと考えられます。

出典元:同上

注意して欲しいのは

「嫌な記憶を消す」のではなく、メモリ容量を減少させることにより「記憶する能力自体を低下させる」ということです。

この件は友田明美氏が性的虐待について語った個所なのですが、面前DVも視覚野にダメージを与えるため記憶力を低下させるかもしれません。

3.毒親理論から言っても非常に厄介

面前DVが深刻なダメージを子どもの脳に与える理由は親の暴力・暴言を見聞きすること自体がショックだからなのでしょうが、

友田明美氏は罪悪感も影響していると考えているようです。

  • 自分だけが被害に合っていないことによる罪悪感。
  • 自分が親を守れないことの無力感、それが悪化すれば逆に自分も加害者のように思ってしまう場合もある。

ところで「罪悪感」は毒親を考える上でのキーワードでもあります。

3-1.罪悪感と恐怖感

「毒親」という言葉の生みの親でもあるスーザン・フォワードの著作を読み解けば、

毒親とは様々な行為によって子どもに「罪悪感」と「恐怖感」を抱かせる親であると解釈できます。

もっと言えば、毒親には「罪悪感を抱かせるタイプ」と「恐怖感を抱かせるタイプ」に分けられるのですが、

面前DVが起きる夫婦は罪悪感と恐怖感の両方を子どもに与えてしまっているのです。

3-2.「もう片方の親」の役割

DVを受けている側の親は精神的に追い詰められており、育児の出来る状態ではなくなっている可能性があります。

DVをする側の親はそもそも育児ができるのかはわかりませんが、最悪なのは子どもにも虐待を加えているケースです。

もう片方の親が育児の出来る状態ではなくなっている場合子どもは誰からも守られることなく虐待に晒され続けます

「面前DV+自身も心理的虐待を受ける」という組み合わせは解離症状などの深刻な症状を起こすと言われていますが、

このような事情が関係しているのかもしれません。

いずれにせよ、虐待問題では毒親だけではなく「もう片方の親」の役割も大きいのです。

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以上です。ありがとうございました。
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