ラジカル・フェミニズム(最も一般的なフェミニズム)について

木

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おそらく、世間一般のフェミニストのイメージを作っているのは[ラジカル・フェミニズム]でしょう。

ラジカル・フェミニストとは、セクハラ発言や性犯罪、ちょっとエッチなキャラのポスターなどにとりわけ厳しいフェミニストの事です。

もっと詳しく特徴を挙げると、

  • 「女性差別の根源には男性の性欲や支配欲がある」と考える。
  • [家父長制][ジェンダー][リプロダクティブ・ライツ]などの重要な概念を作った。
  • 大衆運動化したため、多くの人に「フェミニズム」の存在を知らしめたが、思慮の浅いフェミニストも増やした。

などがあります。

今回はこれらの特徴を手掛かりに、ラジカル・フェミニズムを紹介していこうと思います。

1.ラジカル・フェミニズムの誕生

ラジカル・フェミニズムは当初[ウィメンズリブ(日本ではウーマンリブの名で有名)]と呼ばれていただけあって、両者は問題意識を共有しています。

ウーマンリブには、

  • 妻や母などとしてではなく[女]としての心の叫びを重要視する。
  • 主に女性への性的搾取を問題視する。

このような方向性がありました。

ウーマンリブは廃れたというよりも、[フェミニズム(ラジカル・フェミニズム)]に名前を改めたという感じなので、両者の明確な違いを指摘するのは難しいのですが、

※1960年代 → ウーマンリブ、1970年~ → ラジカル・フェミニズム

ラジカル・フェミニズムの方が理論的であると言えるでしょう。上記したウーマンリブの方向性も、

  • 女性の本質とは何か。
  • 公的・家族領域における女性 →妻、母、働く女性など、だけではなく私的な女性 →生身の女性も大事である。
  • 最も私的な領域である性的な場にこそ、女性差別の根源がある。

ラジカル・フェミニズムによって、これらの問いや意識に深化します。

2.「個人的なことは政治的なことである」

ラジカル・フェミニズムはいくつもの重要な概念や言葉を残しました。

2-1.意識覚醒(意識高揚運動)

ラジカル・フェミニズムの重要なスローガンに、キャロル・ハ二ッシュが掲げた「個人的なことは政治的なことである」があります。

これを具体化するために実践されたのが[意識覚醒(意識高揚運動)]という運動です。これは、

私的な事柄を女たちのグループのなかで語ることで経験を共有し,無意識化されてきた抑圧を認識して意識 変革をおこなう

出典元:竹村和子『フェミニズム』

というものでした。要は「気づかない内に男性からされていた差別の意識化」をするということです。

特に明らかになったのが、

最も個人的なことと見なされていた男女の性的な場にこそ、歴史的・構造的な男女の権力関係という政治的なものが貫通している、というラディカルな認識

出典元:大越愛子『フェミニズム入門』

でした。

この[意識覚醒]は非常に画期的な事とされているのですが、正直、あまり釈然としません。例えば、

無意識のものが本当にただのグループミーティングで意識化されるのか。単に、グループのメンバーに説得されたり、空気に流されたりして「自分も気づかない内に差別されていたのかも」と思い込むようになっただけではないのか。

などの疑問は残ります。

しかし、いずれにせよ[意識覚醒]は多くの女性がフェミニズムを知るきっかけになったのでしょう。

2-2.大衆層に向けた活動

そしてこの事は、先行していたフェミニズムであるリベラル・フェミニズムとの大きな違いだとも言えます。

リベラル・フェミニズムはインテリ層社会的な関心が高い層が中心だったのでしょう。

対する

ラジカル・フェミニズムはもっと一般的な女性を対象にしていました。悪く言えば大衆運動的だったわけですね。

「個人的なことは政治的なことである」というのは、まさに、

個人的なこと(私的な問題)政治的なこと(社会問題)と繋がっている」ということなので、社会問題に関心の高くない層にも配慮していると言えるでしょう。

※一方、リベラル・フェミニズムは政治的なことに関心がありました。

3.ラジカル・フェミニズムは何と闘うのか

[意識覚醒]によって「男女の性的な場に男女の支配関係がある」ということが明らかになったのですが、

「性的な場における男女の支配関係」には2つの意味があるようです。

3-1.性暴力による抑圧

冒頭で、「ラジカル・フェミニストはセクハラ発言や性犯罪、ちょっとエッチなキャラのポスターなどに厳しい」と述べましたが、ラジカル・フェミニズムはこれらを[性暴力]の一種だとして糾弾します。

この[性暴力]には以下の4種類があるようです。

  1. 直接的暴力 →レイプ、性的虐待など。
  2. 儀礼的暴力 →割礼、夜這い習慣など。
  3. 間接的暴力 →ポルノグラフィー、性的中傷、セクハラなど。
  4. 性器を中心とした身体的暴力

はおそらく、①②をする過程で性器を傷つけるということでしょう。また、非常に重要な点として大越愛子氏は以下のように述べます。

男性たちが気づかないままに内面化している性暴力の政治学を、意識化させていく作業が必要であろう。

出典元:同上

つまり、「男性は気づかない内に女性に性暴力を振るっている」ということが多々あるのです。

さらに言えば

[意識覚醒]で明かになったのは「女性も気づかない内に男性から性暴力を受けている」可能性があるということでした。

ラジカル・フェミニズムはこれら「意識的・無意識的性暴力」が女性の抑圧や男性への服従につながると主張し、

「無意識的性暴力」の場合、その意識化を目指しているのです。

3-2.生殖機能による地位の固定

「動物のメスが持つ生殖機能(出産・哺育)は人間社会においては不利に働く」というのは多くのフェミニストの共通認識です。

この[生殖機能]によって、女性は家にいるべき者子どもに近い者というポジションを割り当てられるわけですね。

[生殖機能]に関する議論はフェミニズム界隈ではかなり活発で、中には「母性などは幻想で、男性がねつ造したものに過ぎない」という過激な主張をしている人もいます。

4.様々な概念の創造

生殖機能に関する議論はフェミニズムにおける最重要概念である[家父長制]にも関わります。

4-1.家父長制(父権制)とは

夫→妻、父→子に見られるような、男性と女性そして年長者の男性と若年者の男性の支配関係に関するイデオロギー

[制度]ではなく[イデオロギー]であることに注意。

家父長制の議論は複雑なので後日改めてやろうと思いますが、これを提唱したのもラジカル・フェミニズムです。

4-2.リプロダクティブ・ライツ

さらに、生殖機能の議論はリプロダクティブ・ライツ、つまり子供を産むか産まないかや自分の性生活を自己決定する権利にも関わります。

「子供を産むか産まないかの権利」には中絶を受ける権利が関わります。

中絶については、倫理的観点からよりも宗教上の問題として語られることが多いようです。

特にキリスト教色の強い国や地域では中絶に難色を示す人が多く、猛烈な反発とラジカル・フェミニストたちは闘わなければなりませんでした。

5.性別からジェンダーへ

男性社会と闘うこと。

これは第二期フェミニズムが基調としていることであり、第一期フェミニズムとの違いでもあります。

第一期フェミニズムは「男女平等」を、実質的には「女性が男性から受け入れられること」を目指していました。しかし、

フェミニズムは普遍的な知の「真理性」を高めるための言説ではない。

出典元:上野千鶴子『差異の政治学』

この場合の「普遍的な知」とは男性的な知という意味ですから、ラジカル・フェミニズムを中心とした「第二期」のフェミニストたちは、女性の本質や女性的言語や女性学の作成を目指して行きました。

しかし

やはりラジカル・フェミニストの基本姿勢は性暴力や家父長制などの、男女の力関係を作り上げているものと闘うことです。

ですが、この姿勢はただ単に男性に不満をぶつけたいだけの自称フェミニストを生みだす結果にもなってしまいました。

ところで、巷にもよく浸透した言葉である[ジェンダー]もラジカル・フェミニズムが、いわば男性と闘うために作った言葉です。

ジェンダー論を勉強したことのある人の中には「なんで女性の問題ばかりが取り上げられているんだろう」と疑問に持った方も多くいると思いますが、この辺りの経緯が関係しているわけですね。

※ジェンダー論については別記事

以上です。ありがとうございました。
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