エディプスコンプレックス【女子バージョン】について

逆三角形

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エディプスコンプレックスは、

  1. 異性の親に対する近親相姦願望。
  2. 同性の親に対する競争心や憎悪。
  3. これらの感情に対する罪悪感

という3つの感情のことを指しています。

しかし、精神分析の話でよく議論になるのは男子のエディプスコンプレックスで、よく引き合いに出される例は「ハンス少年の話」です。

よって

「エディプスコンプレックス = 男性のもの」と思っている方も結構いるようですが、女子のエディプスコンプレックスも存在します。

今回は、この「エディプスコンプレックスの女子バージョン」について書いていこうと思います。

1.エディプスコンプレックス【男子ver】

まずは、エディプスコンプレックスの男子バージョンについて軽くおさらいしましょう。

1-1.概要

エディプスコンプレックスのキーワードは幼児性欲去勢不安です。

子どもは3歳~6歳の[男根期]になると、異性の親に対する独占欲や近親相姦願望を抱きます。

男子の場合は母親に対して独占欲を、そして同性である父親に対しては、

  1. 邪魔に思う(殺意を抱くことも)。
  2. 父親のように強くなりたい(同一化)
  3. それまで通り、大きな愛情を示す。

このように複雑でアンビバレントな感情を抱きます。

次第に敵意が強くなっていくのですが、この敵意は「父親から、報復としておちんちんをとられるかもしれない」という[去勢不安]によって断念され無意識に抑圧されるようです。

同時に、母親に対する近親相姦願望も無意識に抑圧されます。

やがて思春期になると、男の子は母親に抱いていた性的欲望を違う女性に向けるようになります。

こうしてエディプスコンプレックスは克服されるのです。

1-2.超自我の形成

この時「超自我」が形成されることにも注意しましょう。

超自我とは

  1. 父親への同一化によって得られた力強さ。
  2. 父親から「やってはいけない」と言われた経験。

これらを基にして作り上げられた倫理観行動規範のことです。

そして、「この超自我は女子には明確には形成されない」というのがフロイトの主張なのですが、次はいよいよ女子のエディプスコンプレックスを見ていきましょう。

2.エディプスコンプレックス【女子ver】

女子も男子も最初は父親よりも母親に愛情を寄せます。

しかも

女子は男子と同様に、男根期(の初めの頃)には母親との近親相姦願望をもっているそうです。

それでは、どのようにして女子にエディプスコンプレックスは訪れるのでしょうか。

2-1.陰茎羨望とは

実は、女子の場合にも「去勢」が大きなポイントになります。

もちろん、女性にはペニスはありません。しかし、「ペニスがない」ということが重要なのです。

女子は父親のペニスを見るなどの仕方でペニスの存在を知っていたのですが、男根期になると、段々と自分にペニスがない事に落ち込み、「自分もああいうのが欲しい」という[陰茎羨望]を抱くようになります。

陰茎羨望は非常に強力な欲望で、母親と父親の評価を入れ替えます。

女の子が父親に差し向ける願望は、たぶんもともとは陰茎への願望であり、母親がこの願望を叶えてくれなかったので、こんどはそれを父親から期待するのです。

出典元:ジークムント・フロイト『精神分析入門』

その母親が去勢されているのを発見するとともに、母親を愛情の対象としては見捨てることが可能となり、その結果長い間蓄積されてきた敵意への諸動因が優勢を占めるわけです。

出典元:同上

そしてこの時、女の子にエディプスコンプレックスが訪れるのです。

ちなみに、自分にペニスがない事に落ち込んだ女児は「自分は去勢されている」と思うとのことです。

フロイトは男児にしても女児にしても、その心の発達を「ペニスと去勢」を軸に考えているわけですね。

2-2.陰茎を得られなかった女児

陰茎羨望を抱きつつも陰茎を得られなかった女児は、3つの道を辿ります。

2-2-1.性的障害または神経症になる

これは陰核(クリトリス)への嫌悪によって起こるそうです。

2-2-2.男性的になる

現実を拒み男性との同一化を図ります。そして、極端な場合は同性愛者にもなるそうです。

2-2-3.女性的になる

現実を受け入れ女性的になります。ここで言う「女性的」とは、フロイトによると、

  • 受け身であること(女性器は男性器を入れられるものだから)。
  • 子どもを欲し、育てること。

フロイトの頭の中では「女性的=母親的」ということになっているようですが、何故そうなるのかと言うと、

「ペニス → 子どもを作るもの → 子ども」と連想(象徴的等価性の原理)していき、「ペニスを手に入れる=子どもを手に入れる」ことだと発想するようになるからです。

つまり

母親にとって自分の子どもとは、幼い頃の陰茎羨望が形を変えたものだということになります。

むちゃくちゃな話ですが、フロイトによると、これは無意識に行われる発想の転換であるため、意識できないそうです。

3.女性に超自我はない?

先ほどまとめた3つの道の内、一番正常な発達だと言えるのは「女性的になる」です。

しかし、ここで大きな注意点があります。

女性が子どもを欲しがることには「父親に対する近親相姦願望」も含まれているのです。

一方、母親に対してはと言うと、

憎悪はきわめて顕著なものとなって一生涯続き、そして細心に過剰補償されることがあります。

出典元:同上

ここで言う「過剰補償」とは、憎悪することへの反動として逆に愛情を抱き、バランスを取るということです。

さて、重要なのは、これらの父親・母親への反応はエディプスコンプレックスそのものだということです。

つまり

女性は最も健全に発達した場合でも、完全にはエディプスコンプレックスを克服できないわけですね。

このことは超自我の形成にも関わります。

超自我はエディプスコンプレックスを克服し、両親をから精神的に自立しなければ生じません。しかし、女性はそれが出来ません。

そこでフロイトはこのように結論付けます。

女性には公正ということに対する感覚があまり認められない

出典元:同上

4.フロイトから精神分析フェミニズムへ

今回は「エディプスコンプレックスの女子バージョン」についてまとめたのですが、かなりショッキングな内容だったと思います。

まあ、ぶっちゃけて言えば、フロイトの精神分析自体が、

  • 反証可能性がない(間違っていないかチェックしようがない)ため、フロイトの言いたい放題の内容になっている。
  • フロイトは事あるごとに「分析的観察によって明らかになった」と言うが、それが具体的にどのようなものなのかはっきりしない。

という、かなりの問題を孕んでいるので、不快になった方はあまり気にしなくても良いと思います。

※ただし、精神分析はヒステリーなどの精神疾病の治療等には功績があります。

さて、フロイト自体に関して言えば、典型的な「インテリにありがちな男尊女卑論者」だったことがわかったのではないでしょうか。

※男尊女卑の定義については

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準備中

そのような事もあり、フロイトの理論はフェミニズムにとって大きな関心事であるようです。

そこで次回は、フロイトの精神分析を取り入れたフェミニズムである「精神分析フェミニズム」の話をして行こうと思います。

以上です。ありがとうございました。
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