マルクス主義フェミニズムとは | 家事労働はいくらになる?

マルクス

この記事をシェアする

カール・マルクスいわく、

労働者階級の不断の維持と再生産とは、依然として資本の再生産のための恒常的条件である。資本家はこの条件の充足を安んじて労働者の自己保存本能と生殖本能とにまかせておくことができる。

出典元:カール・マルクス『資本論』

いきなり小難しい文章の引用から入ってしまいましたが、マルクスが言いたかったことは、

  1. 資本家(労働者から賃金を搾取する階級)が地位を維持するためには、労働者階級が存在し続けなければならない
  2. そのためには再生産(労働者階級を産み・育てる、家事をして生命活動を維持するなど)が必要である。
  3. しかし、それらは労働者階級が勝手にやるため、資本家が手当をする必要はない。

ということです。

この「労働者階級の再生産」の実態はマルクス、およびマルクス主義によってはあまり掘り下げられなかったのですが、マルクス主義フェミニズムによって深く掘り下げられることになります。

1.マルクス主義フェミニズムの担い手は?

誕生した経緯から

1-1.社会主義フェミニズムとの関係

19世紀後半から20世紀前半にかけて活躍した社会主義フェミニズム実質的にはマルクス主義者

つまり

労働者階級(プロレタリアート)の解放が女性の解放にもつながる」と考えていました。

女性の自由は、いわば副次的な問題で、マルクス主義自体も男性が中心だったわけですね。

高知のマルクス主義者

俺らが女も自由にしちゃるき、任せときや!

みたいな感じです。

ところが、実際は、

  • 資本主義国はもちろん、共産主義革命を成功させたソ連や中国においても、女性は職場労働と家事労働の二重労働を強いられた
  • マスクス主義者たちは実生活では女性蔑視をしていた。

という問題を抱えていました。それに対し異を唱える形で登場したのがマルクス主義フェミニズムです。

フランス革命への幻滅によって生まれたのがリベラル・フェミニズムでしたが、同じように、マルクス主義に対する幻滅によって生まれたのがマルクス主義・フェミニズムだったというわけですね。

関連記事

準備中

1-2.家事=労働

マルクス主義・フェミニストは、もともとラジカル・フェミニストだっただけあって、私的領域家族領域における女性問題に敏感です。

マリア・ダラ・コスタは1972年『家事労働に賃金を』という著作を出版します。この著作は、

  1. 「家事」という、生活の一部(マルクスの言い方では自己保存本能に根差すもの)を「労働」に位置付ける
  2. それは何故か女性が担うべきものとされる。

これらの問題点を指摘した点で非常に画期的でした。

2.家事労働はいくらになるのか

それでは家事労働を賃金に換算するといくら位になるのか…と、その前に、「家事労働」の定義をはっきりさせておきましょう。

2-1.家事・再生産・介護・家族内の労働

家事とは

炊事・洗濯・掃除・育児など、家庭生活に必要な仕事。

出典元:『大辞林 第三版』

※あくまで「家庭内」のことであるため、一人暮らしの場合、炊事などは家事とは呼ばれない。

これらの「家事」を労働として捉えたものが「家事労働」です。そして、家事労働に、

弱った家族の世話をする「看護労働」、社会生活を円滑に営み、日々を活性化させる「近所付き合い」や「親戚付き合い」など

を加えたものを「再生産労働」と言います。

さらに、最近では「介護」も問題になっていますよね。そこで、再生産労働に介護労働を加えたものを「家庭内労働」と名付けましょう。

そして、

  • 家庭内労働には給料が出ない
  • 家庭内労働は女性が担うべきものとされている。

ということに疑問を呈すのがマルクス主義フェミニズムです。しかし、今回は「家事労働」に話を絞りましょう。

2-2.三つの賃金換算方法

家事労働の賃金換算については『Kajily』というサイトを参考にさせて頂きます。『Kajily』によると、賃金換算の方法は以下の3つがあるそうです。

2-2-1.機会費用

一つ目は[機会費用]の考え方を適用する方法です。

「家事をしている間に仕事をしていたら、いくら稼げたか」を考えるわけですね。

『Kajily』は「妻が34歳で5歳以下の子どもがいるケース」を例に出します。

  • 5歳以下の子どもがいる家庭の主婦が1日のうち家事をする時間は約7時間(総務省の「社会生活基本調査」より)。
  • 34歳の女性の平均時間給は1430円(厚生労働省の調査)。

1430×7で、一日あたり10010円。家事には一年365日、休みがないので、10010×365で365万3650円。

これが、主婦が仕事をしていれば得られるはずだった賃金の目安です。

2-2-2.似た専門職との比較

二つ目は家事と似た専門職による労働で得られる賃金との比較です。

家事労働7時間の内、炊事:3時間、買物:1時間、洗濯:1時間、掃除:2時間、それぞれ行うと仮定し、

  • 炊事 →調理師、時給は大体1150円。×3で3450円。
  • 買物 →買い物の用務員、時給は大体1150円。×1で1150円。
  • 洗濯 →洗濯工、時給は大体1000円。×1で1000円。
  • 掃除 →ビル清掃員、時給は大体1000円。×2で2000円。

このように捉えます。

すると、合わせて日給7600円。×365日で年収277万4000円(①)。

『Kajily』は育児をこれらと同時に行うと捉えます。保育士の平均時給は1250円。×7時間で日給8750円。×365日で年収319万3750円(②)。

そして、①+②で596万7750円。

この値段はあくまで炊事・買物・洗濯・掃除と同時並行して育児を7時間行うと仮定したものですが、参考にはなると思います。

2-2-3.家事代行の料金として計算

3つ目は家事代行サービスの使用料金に換算する方法です。

家事代行サービスの時給は大体1030円。7時間の利用で7210円。これを一年間続けると263万1650円になります。

ただし、家事代行サービスには育児は含まれていません

先ほどと同じく育児も同時に行うとすると、保育士の平均日給8750円×365日で319万3750円。263万1650円と合わせると582万5400円になります。

2-3.おすすめサイト

というわけで、家事労働を賃金に換算する3つの方法を紹介しました。

家事の時間配分などに疑問を持つ方もいると思いますが、そのような方にも計算方法自体は参考になるでしょう。

また、こちらのページ(あなたの家事は月給いくら?)では簡単に家事労働の月給を診断できるようです。

3.小学生以降の子どもを持つ家庭の課題

『Kajily』が例示していたのは「5歳以下の子どもがいる」という、子どもに手がかかる時期のケースでしたが、

6歳(小学生)以降の子どもを持つ家庭」では課題が異なってきます。

身の回りの世話という点では、小学生以降の子どもは乳児や幼児よりも負担がかかりません。

しかし

今度は教育費がかかるようになります。言い換えれば、親はより金を稼いで教育を買わなければなりません

そのために多くの母親は働きに出なければならないのです。

もちろん、稼がなければならない理由は「教育費」だけではないでしょう。「子どものおけいこ」「住宅ローン」「娯楽のため」色々あります。

ですが、それらのために妻のパート収入が頼りになることは間違いありません。

4.「母性」への疑い

今回は「家事労働」の話をしましたが、マルクス主義フェミニズムは「再生産労働」や「家庭内労働」も問題にします。

言い換えると、育児や介護や親戚付き合いなどを「労働」と呼びます。しかし、この事に不快感を覚える方も多いのではないでしょうか。

育児などは「愛」によって自発的に営まれるもので、金のためにしょうがなくやるものではないと多くの方は思うでしょう。

しかし、マルクス主義フェミニズムはこの「愛」や「自発性」にも疑いの目を向けます。

例えば、「母性」について、

  • 上野千鶴子氏は「母親に自己犠牲を幸福な事と思わせ、従属的な存在に貶める家父長制の一種」と指摘。
  • エリザベット・バダンテール氏は「単なる愛着に過ぎず、『母性本能』なるものは存在しない」と主張。

つまり、母性は[愛]や[本能]などの「もともと人間に備わったもの」ではないと主張します。

このような多くの人を不安にさせる主張をマルクス主義フェミニストが平然とする理由は、彼女たちがアンタッチャブルとされている「家族領域」に一石を投じるからでしょう。

そういった意味では、マルクス主義フェミニズムは本家のマルクス主義よりもラジカルな思想だと言えるかもしれません。

以上です。ありがとうございました。
次の記事

前の記事

この記事をシェアする