アイデンティティーの意味 〇〇は間違い?個性との違いは?


この記事をシェアする

「アイデンティティー」という言葉は使いこなすことができたら周囲に一目置かれるだろうし、社会や人生の捉え方が変わるかもしれません。

しかし

そんなオイシイ言葉だからこそ適当な理解で適当に使われてしまっているようです。

そこで今回は「アイデンティティー」の正しい使い方を例文を交えてわかりやすく説明しようと思うのですが、

このオイシイ言葉は様々な類語・派生語があるし、哲学的な議論にも接合します。

その点もわかりやすく紹介しようと思います。

1.アイデンティティーの意味

適当なことを言っていると思われないために、まずは辞書(Weblio辞書)を引きます。

アイデンティティー [3] 【identity】⇒ 同一性(どういつせい)

出典元:三省堂 大辞林 第三版

ハイ、さっそくたらい回しです (´・ω・`)

気を取り直して「同一性」の意味は

どう いつせい [0]【同一性】〔identity〕

〘哲〙 あるものが時間・空間を異にしても同じであり続け、変化がみられないこと。

①物がそれ自身に対し同じであって、一個の物として存在すること。自己同一性

②人間学・心理学で、人が時や場面を越えて一個の人格として存在し、自己を自己として確信する自我の統一をもっていること。自我同一性。主体性。

出典元:同上

このように、アイデンティティー(同一性)は心理学用語であり哲学用語でもあります。

(まあ、心理学自体が哲学から派生したものなので似通るのは当然と言えば当然なのですが。)

しかし

心理学的使い方も哲学的使い方も正直言ってわかりづらいと思うので、まずは一般的な使い方から見ていきましょう。

1-1.一般的な意味

様々な文章や自己啓発本、それから日常会話などで使われるアイデンティティーの意味は、

自分は自分であって自分以外の何物でもないということを自分自身が確信している状態のこと。

重要なのは「確信している状態」だということです。

1-1-1.良くない使用例

まずは以下のような使用例を見てください。

  • 母親として子どもをしっかり育てることが私のアイデンティティーです。
  • 会社の業績を改善させるために多くの従業員の解雇もした。弱肉強食の世を生き抜くことが私のアイデンティティーだ。
  • 人とかかわるのが好きなことが僕のアイデンティティーなので、学生時代はよくボランティア活動をしました。

このような使い方でも意味は通ると思いますが、私はお勧めしません

なぜなら

これらは、「子どもを育てること」や「弱肉強食の世を生き抜くこと」などの何らかの「行為」を指していますよね。

しかし、アイデンティティーの意味は自分は何者なのかを確信している「状態」でした。

ややこしいと思うので良い使用例を書きましょう。

1-1-2.良い使用例

  • 母親として子どもをしっかり育ている内に、私のアイデンティティーは確立しました。
  • 会社の業績を改善させるために多くの従業員の解雇もした。弱肉強食の世を生き抜く内に、私のアイデンティティーは見出された
  • 学生時代のボランティア活動を通して、僕のアイデンティティは確立されたと思います。

このように

「アイデンティティーは確立された」とか「見出された」とか言っていれば間違いないでしょう。

1-2.哲学的な意味

難しい言い方をすれば

「自分は何者なのかの確信をもたらす行為や事柄」ではなく「自分は何者なのかを確信している状態」がアイデンティティーです。

さて、繰り返すと、

アイデンティティーとは

自分は自分であって自分以外の何物でもないということを自分自身が確信している状態のこと。

なのですが、これにはある重要な要素が隠されています。

それは

「自分は自分だ!」という感覚が【過去→現在→未来】と継続していなければならないということです。

そのような継続性がなければ「自分自身への確信」は脆弱です。

しかし「継続性」が大事だからと言って何年も先のことを考える必要はありません。

10年後にも変わらず「自分自身への確信」はあるのかなんて考えていたら話ができないので「継続性」はそこまで考えなくても良いでしょう。

先ほど引用した【三省堂 大辞林】での「同一性」の意味を再度確認していただきたいのですが、

〘哲〙 あるものが時間・空間を異にしても同じであり続け、変化がみられないこと」とあります。

不変」とか「物がそれ自身に対し同じ」などは、いかにも哲学的な表現、厳密に言うと「存在論」的な表現です。

「存在論」の詳しい説明は今回は省きますが、

プラトンやらアリストテレスやらデカルトやらカントなどが半ば引きこもり状態になりながら、

存在論について考えてきた歴史があることも是非知っておいて下さい。

関連記事

準備中

1-3.心理学的な意味

先ほどいろいろな名前をあげましたが、「アイデンティティー」という言葉を作ったのは心理学者のエリク・エリクソンです。

【三省堂 大辞林】におけるの意味はまさにエリクソン的な意味なのですが、注意して欲しいのは

一個の人格」や「自我」などと書かれているので個人主義的な言葉と思われそうですが、決してそうではないということです。

このことはエリクソンの思想やアイデンティティのもともとの意味や意義を知る上で重要なので後ほど解説します。

2.アイデンティティが提唱された背景

そもそも

「私は私だ!」という感覚を皆が当たり前のように持っていれば「私は私だ!」という感覚について深く考えることはないですよね。

つまり、エリクソンが「アイデンティティ」という概念をわざわざ提唱したのは、

多くの人が「私は私だ!」という感覚を昔の人ほど持てなくなったという時代背景があったからでした。

1960年以降の高度に管理化された社会の中で自分に自信を持てなくなった人々が多く生まれたのです。

いわゆる、

「アイデンティティーの危機(アイデンティティークライシス)」

と呼ばれるやつです。

2-1.アイデンティティークライシス identity crisisとは

「いったい何が自分なのか」が分からなくなった状態のこと。

先ほどの例文になぞらえて言うと、

「子育てに熱心な母親が子どもが自立したことでアイデンティティークライシスになる」が使用例です。

似た言葉に「アイデンティティーの拡散」があります。こちらも同じような意味ですが、ニュアンス的には、

いろんな肩書や趣味を持っていく内に「けっきょく何が自分なのか」がわからなくなるといった感じです。

2-2.再度「継続性」の問題

アイデンティティーは1960年代の空気が反映された言葉なのですが現代のわれわれにも無関係ではなさそうですよね。

アイデンティティークライシスに陥っている人もいるだろうし、そうでない人もいずれ自分が何者かわからなくなるかもしれません。

だったら今のうちにアイデンティティーのことを考えましょう…という単純な話ではないのです。

アイデンティティーとは「私は私だ」という感覚が継続している状態のことでした。

例えば

経営者として生きる中でアイデンティティーが確立されたとしても、仕事が上手くいかなかったり退職したりしたらどうでしょうか。

先ほど「良い使用例」として挙げた

会社の業績を改善させるために多くの従業員の解雇もした。弱肉強食の世を生き抜く内に、私のアイデンティティーは見出された

というのは会話や文章を書くといったレベルでは問題のない例文ですが、もっと哲学的なレベル、

つまり

「継続性」も含めて議論するとなると結構複雑なのです。

3.継続性を担保するには

それでは十分に継続的にアイデンティティーを確立させるにはどうすれば良いのでしょうか。

3-1.失われない目標

まずは「継続できる何らかの目標をもつ」というのが大事でしょう。

「有名大学に進学する」とか「順調にキャリアアップしていく」なども大きな目標ではあります。

しかし

「受験合格」は受験が終わったらなくなるし、「キャリアアップ」は周りにも影響されやすいため継続的じゃないし不安定です。

そのようなものではなく、例えば

  • 一日一善
  • 毎日寝る前に少しずつ読書をする。
  • 休日は1時間ジョギングする。

など簡単過ぎず、でも難しすぎて挫折するようなことのないような目標を持でば良いでしょう。

※余談ですが、当サイトは「毎日少しずつ読めば教養がジャンジャン身に付くブログ」を目指しています。

また

これらは周りに邪魔されずに自分だけでコツコツ努力を積み重ねることができるものでもあります。

しかし、アイデンティティーには「集団の中」で養われる面もあるのです。

3-2.集団に帰属する

アイデンティティーは「帰属意識」と訳されることもあります。

帰属意識とは

自分はある集団に属しており、その集団の一員だと思うこと。

「帰属意識」の有用性を哲学的に説明するとこうなります。

全存在、全世界と自分は連続している、自己一個の死がそれらとの断絶にならないといういう思想にたてば、何らかのものとの一体感、連帯感、安定感が出てくる。

出典元:同上

このように言うと、なんとなく宗教のように聞こえると思います。

キリスト教的な回心仏教的な悟りの境地に至った人はこのような「一体感、連帯感、安定感」を体験できるのだと思いますが、

われわれにも体験できないわけではありません。

3-2-1.社会の一員になる

エリクソンは「社会」について考えた心理学者でもありました。

アイデンティティとは、「自分が自分として存在している」という生き生きとした実存的な意識と、その自分が社会の一員として社会との間に「内的な一貫性」をもって生かされているという安心感が統合されたところに成り立っている概念である。

出典元:同上

「社会の一員」と言うと「社会人」を連想するかもしれませんが、そういう訳ではありません。

社会には「国家」「民族」「共同体」「家族」「仲間」などの様々なレベルがありますが、そういった集団の一員になるということです。

そういった集団に所属しその集団の他者と時間を共有し、役割を果たすことで他者から必要とされ承認される

ことでアイデンティティーか確固なものになります。

※「国家や民族の一員」というとナショナリズムを連想して危ない感じがする人もいるかもしれません。

関連記事

ナショナリズム

以上のように、アイデンティティーは集団とも関わるのでこのような関連語もあります。

3-2-2.コーポレートアイデンティティー(corporate identity)

企業理念のこと。ブランドアイデンティティー(brand identity)とも。

これはよく使われる関連語なので是非覚えてください。

4.類義語や関連語

アイデンティティーの類義語や関連語としては、

「実存」や「レゾンデートル」、それに「自我」や「エートス」も近いかもしれません。

関連記事

準備中

しかし、今回紹介したいのは「パーソナリティ」との違いです。

パーソナリティー [4]【personality】

①個性。人格。 「すぐれた-の持ち主」

② 〘心〙 個人個人に特徴的な、まとまりと統一性をもった行動様式、あるいはそれを支えている心の特性。人格。 → 性格

③〔アメリカで、担当者の個性的魅力を利用した番組を称したことから〕 ディスク━ジョッキー。特定番組を担当するタレント。

出典元:三省堂 大辞林 第三版

はさて置き「個性」「人格」「性格」

また

重要なのは「ペルソナ」という仮面を意味するギリシャ語が語源になっているということです。

仮面は演劇の登場人物が「自分の個性」を観客に分からせるために使います。

よって、「パーソナリティー」にも他人からどのように見られているかという意味合いがあります。

対して「アイデンティティーは自分が自分をどう理解するかだ」と説明する方もたまにいますが、それは正確ではありません

先述したように、アイデンティティーにも「他人からの承認」という契機が含まれています。

むしろ

パーソナリティーを育むこと通してアイデンティティーが確立することもあるという意味では両者は切り離せません。

というわけで、逆に両者はセットで考えた方が良いでしょう。

関連記事

パーソナリティー

以上です。ありがとうございました。
次の記事

前の記事

この記事をシェアする