フロイトの警告 |「愛着障害は被害妄想説」に対する反論

精神分析家

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まずは、精神科医の岡田尊司氏の発言を引用します。

ネガティブな評価の一般化という傾向は、愛着障害の人にしばしば見られる。どんなに愛情を注いで手間暇をかけて関わってもらっても、良かった面についてはあっさり忘れてしまい、例外的な出来事にすぎない傷ついた体験が、すべてを覆っていたかのようにみなし、語るようになるのである。

出典元:岡田尊司『愛着障害』

つまり「愛着障害の人は被害妄想が強い」というわけです。この発言の問題点

  1. 本当に親から酷い扱いを受けてきた人も「被害妄想だ」と言われる。
  2. まともな親であっても逆恨みされる。

については、まさに当サイトが「愛着理論は毒親被害者の為にならない」と主張している理由なのですが、のような視点も重要です。

と言っても「逆恨み」という表現は正確ではないかもしれません.

なぜなら

精神科医は患者が親を恨むように仕向けることも出来るからです。

これこそが今回の主役であるジグムント・フロイト危惧した事態でもあります。また、

愛着障害の治療は「親を叩くこと」なので、多くの人が親を恨めばそれだけカウンセリングで儲ける機会が増える

ということも指摘しておきましょう。

※今回の記事は「愛着理論」の知識が前提となるので、

こちらも併せてお読みください。

1.フロイトの発見

ポイント

愛着理論はフロイトが創始した「精神分析」の流れを汲みます。

1-1.カウンセリングによるミスリード

フロイトが自身の理論を作る上で、大いに貢献したのはヒステリーの研究です。

フロイトはヒステリーの患者たちとの対話を通じて、ヒステリーの原因は幼児期の性的なトラウマであることを発見しました。

が、すぐにフロイトは自身の発見に疑問を持ちます。

なぜならば、ヒステリーの患者たちが回想する性的外傷の体験が、しばしば事実ではなく、虚構と現実の混合、半ば空想の産物であるという事実にフロイトは気づいたからである。

出典元:小此木啓吾『フロイト思想のキーワード』

「回想する性的外傷の体験」は基本的に近親相姦にまつわるものだったのですが、親を陥れようとしているというよりは、

そのような出来事があったと思い込んでいる、

さらに言えば

精神科医のカウンセリング次第で患者は「性的外傷の体験」があったと思い込むようになることもあるようです。

1-2.心的リアリティとは

そこでフロイトは

患者にこの種の回想を強要し、再生するように暗示をかけることは問題

出典元:ジグムント・フロイト『ヒステリーの病因について』

と語るようになりました。また、その後あの有名な『精神分析入門』で

神経症の世界では、心的リアリティこそ決定的なものである

出典元:ジグムント・フロイト『精神分析入門』

と述べるようになりました。「心的リアリティ」とは思い込みのことです。

フロイトが「神経症の世界」をどの程度の規模で想定していたのかは定かではありませんが、要するに

精神的トラブルを抱えた人は「何らかの被害に合った」と思い込みやすいし、精神科医もそう思い込ませることが出来る

ということにフロイトは警鐘を鳴らしているわけです。

さらに言えば精神科医自身にも「そのようなことをするな」と警告をしているわけですね。

2.フロイトの警告を踏まえているのか

ここで冒頭の話題に戻りましょう。

岡田尊司氏の「愛着障害の人は被害妄想が強い」という発言は、フロイトの心的リアリティを踏まえているのかもしれません。

しかし

岡田氏はフロイトの警告を踏まえているでしょうか。

岡田氏の著作は

  • 実はあの悩み(うつ生きづらさ上手くいかない人付き合いなど)も愛着障害が原因だ!
  • 実はあの有名人(夏目漱石オバマ元大統領スティーブ・ジョブズなど)も愛着障害者だ!

と言って、不安を煽ったり、愛着障害が蔓延しているイメージを作り出したりするのが特徴です。

そうすれば現在精神的トラブルを抱えた人は「実は自分は親から酷い扱いを受けた愛着障害者かもしれない」と思うようになるかもしれません。

3.フロイトの警告を無視した結果…

精神分析家

岡田氏がフロイトの警告を無視し、患者に対し

「実は自分は親から酷い扱いを受けた愛着障害者かもしれない」と思い込ませようとしているのではないかと疑わぜるを得ない箇所は

「回避型」の愛着スタイルの治療法について言及しているところにも出てきます。

3-1.「回避型」愛着スタイルの克服法

岡田氏によると「回避型」の人は嫌な記憶を封印する傾向があるそうです。

語る作業をしているうちに、次第に記憶がよみがえってきて、自分がこれまで封印してきたものに向かい合い始める。そうなると、これまで忘れていた、その時々の感情や気持ちもよみがえり始める。

出典元:同上

しかし、ここまで読んできた方なら

  1. 親のせいで回避型になる→「不幸」や「生きづらさ」を抱える。のではなく
  2. 「不幸」や「生きづらさ」を抱えている→カウンセラーの話を聞いている内に親の悪い部分ばかり思い出す
  3. その結果、自分は回避型だと思うようになる

という可能性の方が高い事が分かると思います。

3-2.被害妄想が強くない人に対しても

岡田氏の「愛着障害の人は被害妄想が強い」という考察は、回避型の人にどの程度当てはまるかはわかりませんが、

別に被害妄想が強いわけではない人に対しても岡田氏の治療法は危険だと言えます。

なぜなら

人間はネガティブな気分に浸っていれば、ネガティブな記憶を思い出しやすくなるからです。

そして親の悪い部分ばかり思い出して、自分は回避型だと思うようになることもあります。

3-3.フロイトに対する批判もある

以上のように書くと、フロイトの精神分析を礼賛しているように思われるかもしれませんが精神分析には大きな問題があります

現在では精神分析や暴露療法などの古いカウンセリング手法の効果は否定されています。

そして、愛着理論(「安全基地」による愛着障害の治療)は精神分析と暴露療法の要素を併せ持っています。

よって、かなり危険というか症状を悪化させることもあります。

「安全基地」による愛着障害の治療方法の詳細は ↓ に書きましたが、

現在の脳科学はこの方法は愛着障害を悪化させる可能性が非常に高いことがを明らかにしたのです。

4.まとめ

今回の内容をまとめると

  • 岡田尊司氏の「愛着障害の人は被害妄想が強い」発言は、フロイトの「心的リアリティ」にヒントを得ている。
  • しかし、フロイトの「心的リアリティ」は患者を責めているわけではなく、患者を洗脳する精神科医を責めている。

特に岡田尊司氏は有名な先生ですが過度に信じない方が良いでしょう。

岡田氏の過去の言動他の専門家からの批判も頭に入れておいて下さい。

以上です。ありがとうございました。

※「愛着障害」に関する全記事はこちら

愛着障害【全知識】
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