愛着障害の「異なる」診断基準 | 正しいのはどっち?

○×犬

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今回の記事は「既に愛着障害と診断(自己診断も含め)された方」にも知って欲しい内容になっています。

まずは、タイトルの「正しい診断基準」の意味について軽く触れておきたいのですが、

診断基準とは「症状」と「原因」についてのことである

と思っておいてください。

まあ、「診断」という言葉の中に「原因の解明」というニュアンスが含まれるのかはわかりませんが、

愛着障害に関して言えば「何が原因でそうなったのか」という原因の解明がとりわけ大事だと言えます。

※当サイトでは岡田尊司氏の著作を主に参考にしていますが、岡田氏が拡大解釈した愛着理論への批判もしています。

  • 愛着障害の正しい診断基準や症状・特徴
  • 治療方法やその副作用、カウンセリングを受ける際の注意点
  • 生きづらさの正体
  • 毒親との関係

などの知識に興味がある方は

愛着障害【全知識】

こちらをご覧ください。

1.精神医学界の診断基準

カルテ

精神医学で愛着障害だと認められているのは「反応性愛着障害」と「脱抑制型対人交流障害」の2つのみです。

また、5歳までに発症する子どもの障害ということも押さえておきましょう。

この2つの愛着障害の診断基準はいわば「精神医学界で認められている診断基準」です。何故この事を強調するのかというと、

「精神医学界で認められていない診断基準」もあるからです。

「認められていな診断基準」については後述するとして、まずはこの2つの障害の診断基準を見ていきましょう。

1-1.反応性愛着障害の診断基準

基準A: 大人の養育者に対して、苦痛があっても訴えず、楽になろうとしない。そればかりでなく、たとえ苦痛から助けてもらっても喜ばない。これが一貫している。さらに

基準B: 他人と交流せず、1人でいることが多かったり、喜びを出さなかったり、養育者と一緒にいても落ち着かず、悲しみや恐れを見せている。その原因として、

基準C: 十分な養育を受けていないこと(ネグレクト)が考えられる。

出典元:高橋和巳『「母と子」という病』

1-2.脱抑制型対人交流障害の診断基準

基準A: 見慣れない大人に躊躇することなく近づき、付いていってしまったり、過度に馴れ馴れしい態度を見せてしまったりする。

そして、不慣れな環境で自分の養育者と離れた後でも、養育者のほうをふり返ろうとしない。さらに、

基準B: 脱抑制的な、突発的な行動がみられ、その原因として、

基準C: 十分な養育を受けていないこと(ネグレクト)が考えられる。

出典元:同上

1-3.原因=ネグレクト(虐待)

以上が診断基準なのですが、注意して欲しいのは

いずれも原因ネグレクトという虐待の一種だということです。

先述したように、診断する上では原因の解明が非常に重要になってきますので強調しておきます。

ネグレクトとは

育児放棄」とも訳され、たとえば食事を適切に与えない、おむつやトイレの世話をしないで放っておく、長時間、家や車内に置き去りにする、などがあげられます。

出典元:友田明美『子どもの脳を傷つける親たち』

脳科学者の友田明美氏は、

脳が未発達な時期に過度なストレスを受けるとそのストレスになんとか耐えるために、子どもの脳は変形する

ということを指摘しています。

過酷な環境でも生き延びようとする内に、子どもは上記の障害を身につけてしまうわけです。

1-4.そのまま大人になったら?

このように厳密には、愛着障害は子どもの障害です。しかし、

これら2つの障害を抱えたまま大人になった場合、「大人の愛着障害」ともいうべき症状や支障に見舞われることもあります。

※その際の「症状や支障」については

2.公式ではない診断基準

精神科医

次は「精神医学界で認められていない診断基準」についてです。

この診断基準によって「3人に1人、つまり日本だけで4000万人が広い意味での愛着障害者だ」と主張しているのが、あの有名な岡田尊司氏です。

よって、岡田氏の言葉を引用しましょう。

不安定型愛着に伴って支障を来している状態を、狭い意味での愛着障害、つまり虐待や親の育児放棄による「反応性愛着障害」と区別して、本書では単に「愛着障害」と示すことにしたい。

出典元:岡田尊司『愛着障害』

これは診断基準とは言えないのですが、岡田氏の主張を端的に示した箇所ではあります。

「不安定型愛着」は「不安定な愛着スタイル」と呼んだ方がピンと来る人も増えるかもしれません。

要は、 ↑ の記事で紹介したことに心当たりがある人は「潜在的な愛着障害者」かもしれないということなのですが、

冒頭でも言った通り、この場合の愛着障害になってしまう原因にも注目しましょう。

2-1.原因=親の愛情不足

3人に1人が関わるということなので、その原因は「親の愛情不足」という虐待よりも遥かにハードルが低いものになっています。

それだけではありません。

岡田氏の言葉を借りれば2歳まで(物心つく前)に「親の絶対的な愛情量が不足」していたら不安定な愛着スタイルになってしまうそうです。

しかし、岡田氏も言うように

物心つく前のことは、本人も覚えていないし、母親自身忘れているということも多い。

出典元:岡田尊司『発達障害と呼ばないで』

つまり「誰も覚えていないけれど、親の愛情が足りなかったに違いない!」というわけですね。

一応、親の愛情が不足してしまう原因、言い換えれば愛着が形成されない原因については ↓ をご覧ください。

こちらに書いたことが当てはまっていなければ愛着障害にはなりません。

2-2.診断というか「推論」

岡田氏によると、例えば「子どもにかまうのが遅れる」というのも愛着障害の原因になり得るらしいのです。その理由は

  1. 虐待」は「かなり愛情が不足した行為」である。
  2. 「虐待」は子どもの脳にダーメジを与え、反応性愛着障害や脱抑制型対人交流障害の原因になる。
  3. 「子どもにかまうのが遅れる」のは「軽く愛情が不足した行為」である。よって
  4. 「子どもにかまうのが遅れ」たら、反応性愛着障害などよりも軽い愛着障害の原因になるはずだ。

このように明確な診断基準に基づくものではなく、かなり「推論」に近いものです。

2-3.専門家からの評価は?

繰り返しますが、これは精神医学界で認められていない診断基準です。さらに言えば「愛着の専門家」からも批判されています。

例えば精神科医の高橋和巳氏は、かなり主張が違うようです。

にもかかわらず、岡田氏は

出版活動やネットでの発信などでネームバリューがあるので、岡田氏の主張が精神医学界の公式見解のように思われているようです。

このように書くと、

  • 精神医学界の公式見解が正しいわけではない
  • 岡田氏は様々なエビデンスを提示しているから正しいのではないか?

と思う方もいるでしょう。しかし岡田氏の主張や活動が批判されるのにはそれなりの理由があります。

2-4.被害妄想に過ぎない?

また、岡田氏は愛着障害者によく見られる特徴として「被害妄想が強く、よく嘘をつく」ことをあげています。

これが本当なら、岡田氏は愛着障害の治療中患者に対して「被害妄想が強いな」「よく嘘をつくな」と思っていることにもなります。

よって、カウンセラーとしてはかなり問題のある発言でしょう。

2-5.結論

結論を言えば、公式ではない診断基準=拡大解釈された愛着障害の診断基準とは

「2歳になるまでに親の愛情がおそらく不足していたはずだ」くらいのかなりあいまいなものになります。

これは果たして診断基準と呼べるのか?…という気もするのですが、「なんなく自分に当てはまってるかも」と思う方もいるかもしれません。

また、最後は岡田氏の発言を批判したのですが、

愛着障害を「2歳になるまでに親の愛情がおそらく不足していた人が抱えるトラブル」くらいに設定したら、

「愛着障害=被害妄想を高め、嘘つきになる」というトンデモ発言にも結びつくということです。

以上です。ありがとうございました。

※「愛着障害」に関する全記事はこちら

愛着障害【全知識】
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