「養育」と「環境」は違う(愛着障害がウソである理由⑥)

○×犬

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今回は

に引き続き「愛着理論」の強力な反論になる考え方を紹介します。ただし、この場合の愛着理論とは岡田尊司流愛着理論です。

愛着障害」には

  1. 狭い意味での愛着障害→伝統的な考え方。精神医学界でも認められている。主張者は高橋和巳氏など。
  2. 広い意味での愛着障害→拡大解釈れたもの。世間ではこっちの方が有名。主張者は岡田尊司氏など。

このように2通りの解釈があります。

の岡田尊司氏が解釈したものはかなり有名なのですが問題点が多いのも事実なので、今回はその内の一つを紹介していきます。

※今回の記事も「愛着理論」の知識が前提となるので、

こちらも併せてお読みください。

1.愛着障害について

カルテ

愛着障害とは

2歳までに親(特に母親)や養育者との間に強い心の絆が出来なかったことが原因で様々な症状や支障が生じている状態のこと。

被害の甚大さがよくわかるのは以下の描写でしょう。

母親は、子どもの対人関係だけではなく、ストレス耐性や不安の感じ方、パートナーとの関係や子育て、健康や寿命に至るまで、生存に関わる影響を、それこそ生涯にわたって及ぼす。

出典元:岡田尊司『回避性愛着障害』

「人間関係」「ストレス耐性」「健康面」という人生のほぼすべての事に生涯にわたって影響するとのことです。

2歳まで」「なぜ母親か」「どうすれば強い心の絆ができるのか」など気になる点はいろいろあるでしょうが、今回は

愛着理論(特に岡田尊司流)には「子どもの一生は親の子育てによってほぼ決まる」という考え方がベースにある

ということを押さえましょう。

なお、以下親の育て方「養育」と明記します。

2.遺伝・養育・環境

子どもたち

岡田尊司氏の著作『発達障害と呼ばないで』を読んだ方ならわかると思いますが、この著作の半分以上が「愛着障害」についての話です。

よって、他の愛着障害関連の著作と被る所も多かったのですが、非常に興味深い箇所もあったのでその点を解説します。

2-1.遺伝と環境と愛着理論

性格を決めるのは「遺伝」か「環境」か…多くの人がこの難問に頭を悩ませてきました。

愛着理論の場合は「遺伝」の存在をほぼ無視し、子どもの不幸のあらゆる原因を「環境」に求め求めます。

※岡田氏は遺伝を考慮しているようですが実質的には無視していると言えます。

2-2.遺伝(遺伝要因)とは?

一時期「遺伝子万能論」のようなものが流行ったのは事実でしょうが、それを岡田尊司氏は批判してこのように言います。

スタンフォード大学の研究者らによる双生児研究によると、求められた遺伝率は4割以下であり、原因の55%は双生児間で共有された環境要因によって説明されるという驚くべき結果を報告している。

出典元:岡田尊司『発達障害と呼ばないで』

「人の性格に影響するのは遺伝よりも環境の方だ」ということです。

※「遺伝」とは生まれ持った性質と考えてください。

スタンフォード大学のこの研究自体はを批判するつもりはないのですが、岡田氏がこの研究成果を以って

親の育て方によって子どもの人生はほぼ決まる」という私の考え方は正しかったんだ!

と結論付けるのは大いに間違っています。

2-3.環境(環境要因)とは?

ここで「環境(環境要因)」の定義を確認しておきましょう

生物の個体、あるいは群れの成育に影響を与えるような外部の要因。気候や他の生物など。

出典元:Wikipedia

注目して欲しいのは「他の生物」という部分です。

要するに

「親」だけではなく、友人などを含めた「他人」全体がわれわれの性格や生き方に対して影響を与えるわけです。

このように「環境」という場合は周りの人全体を指します。

3.養育と環境は違う

○×犬

つまり「養育」と「環境」は違うということです。具体的には、

  • 養育が子どもの世話をすることにより、心身に影響を与えること。
  • 環境→親だけでなく、友だち先輩先生などの周りの人間、テレビやネットなどの情報媒体からの影響なども含んだ総合的なもの。

というふうに捉えてください。

3-1.環境と養育のすり替え

スタンフォード大学の研究は「環境がわれわれに与える影響は強力だ」という結論を私たちに与えるものです。

※考えてみれば当然なような気もしますが、科学的に証明するのはかなり大変なのでしょう。

ところが

岡田尊司氏は「環境」と「養育」をすり替えて親からの影響(悪影響も含め)は強力だ」と主張します。

愛着理論は先述したように、「子どもの一生は養育によってほぼ決まる」という考え方がベースにあるので、

岡田尊司氏としては「養育」の影響を強調したいのでしょう。

しかし、この間違いは岡田氏に限った話ではありません。

後天的とは、生まれてからの環境つまり「家庭」(養育環境)を指します。

出典元:友田明美『子どもの脳を傷つける親たち』

友田明美氏は「虐待研究」のエキスパートです。

このように、岡田氏や友田氏など有名な先生でも「養育」と「環境」を混同させがちなのですが、それには理由があります。

3-2.愛着理論と子育て神話

子育てや人間の心理に関する考え方は「発達心理学」が登場した1950年代ごろから徐々に変わっていきました。

その結果、「環境」の中の「養育」が占める割合がどんどん大きくなっていったのです。

教育研究家のJ.R.ハリス氏はこの考え方を「子育て神話」といって批判しているのですが、「愛着理論」は子育て神話の到達点とも言えます。

というわけで、今回は「環境と養育をすり替えるという間違い」について指摘したのですが、次回は「愛着障害の診断方法」について批判します。

以上です。ありがとうございました。

※「愛着障害」に関する全記事はこちら

愛着障害【全知識】
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